
「終活」の支援という問題は、行政機関にとっても切実な課題となってきています。
終活の分野は多岐にわたります。介護や医療だけでなく、相続や遺言などの手続きも含めた準備は、元気なうちから進めておくことが大切です。
特に千葉市は、家族が離れて暮らす世帯や一人暮らしの高齢者も多いのが特徴です。
こうした問題に対応するため、千葉市では、市民が安心して人生の最終段階を迎えられるよう支援する「エンディングサポート(終活支援)事業」を実施しています。
この記事では、千葉市のエンディングサポート事業の内容と活用方法を、
相続対策や遺言作成の観点も交えながら、行政書士の視点で分かりやすくご紹介します。
※この記事は2025年8月14日現在の情報を元に作成しています。
エンディングサポート事業の目的
私たちの多くは、人生の終わりまでに一定期間、介護を必要とする時期を迎えます。
しかしその間に「どんな介護を受けたいか」「最期をどう迎えたいか」をあらかじめ家族や関係者に伝えていないと、意思が分からないまま物事が進んでしまうこともあります。
特に、認知症などで意思を自由に伝えられなくなってしまうと、
介護の方針や延命治療の可否、葬儀やお墓のことまで、すべてを家族や周囲が判断しなければならなくなります。
このとき、長く別々に暮らしていたり、普段から将来の話をしていなかったりすると、
「どうしてあげるのが本人にとって一番いいのか」分からず困惑してしまうことも多いのです。
千葉市のエンディングサポート事業は、こうしたトラブルや不安を減らし、
「元気なうちから自分の希望や考えを整理し、身近な人と共有する機会」を作ることを目的としています。
行政書士の視点から補足
終活というと「遺言書を作る」「エンディングノートを書く」といった形から入る方も多いですが、
実はその前段階として「何を望むか」を整理し、周囲に共有することがとても大切です。
この市の事業は、まさにその“最初の一歩”を踏み出すきっかけになります。
エンディングサポート事業の主な内容
千葉市のエンディングサポート事業は、大きく分けて次の4つの柱で構成されています。
市民が相談しやすい窓口や、知識を得られる機会を幅広く用意しているのが特徴です。
1.民間事業者との協働による取り組み
千葉市は、市民が終活に関するさまざまな情報やサービスを受けやすくするために、
複数の民間事業者と協定を結び、ノウハウやネットワークを活用しています。
現在の協定先は以下の通りです。
- イオンライフ株式会社(千葉市協働事業提案制度)
- 株式会社ヤックスケアサービス・株式会社博全社(連携協定)
- ソニー生命保険株式会社(連携協定)
これにより、葬儀やお墓、保険や介護サービスといった分野で、専門的な知識や実務経験を持つ事業者からの情報提供や相談対応が可能になります。
行政書士の視点から補足
民間事業者との協働は、市の中立性と民間の専門性を組み合わせられるのがメリットです。
ただし、実際に契約や手続きを進める際は、複数の選択肢を比較し、必要なら第三者の意見も取り入れると安心です。
2.あんしんケアセンターでの総合相談
市内各地に設置されているあんしんケアセンター(地域包括支援センター)では、
介護・保健・医療など高齢者に関する幅広い悩みに対応しています。
ここでは、主任ケアマネジャー、社会福祉士、保健師といった専門職が連携し、
相談者の状況に合わせた支援を行います。
終活の話題も、介護相談の流れの中で自然に切り出してもらえるのが特徴です。
必要に応じて、葬儀やお墓、お金のことなど、専門的な相談が必要な場合には、
協定を結んだ民間事業者や市の関係部署にスムーズにつないでくれます。
3.終活に関する講演会の開催
千葉市では、社会福祉協議会の地区部会など、身近な会場で終活に関する講演会を開催しています。
内容は、介護や医療、相続、エンディングノートの書き方など幅広く、市民が参加しやすい形式です。
講演会は市民の声をもとに開催されることもあり、希望する場合は在宅医療・介護連携支援センターに相談できます。
行政書士の視点から補足
講演会は「終活の情報収集」と「同じ関心を持つ人との出会い」の両方の意味があります。
参加後に不明点があれば、その場で聞くか、あんしんケアセンターや専門家につなげると一歩進めやすいです。
4.終活に関する検討会と「おひとりさま支援の手引き」
千葉市は、医療機関、介護事業者、企業、NPOなど、終活に関わる多様な関係者を集め、
現状の課題や解決策を話し合う検討会(意見交換会)を実施しています。
その成果のひとつが、令和3年度に作成された「おひとりさま支援の手引き」です。
一人暮らしの方や身寄りが少ない方に向け、介護・医療・死後の手続きまでを視野に入れた準備方法がまとめられています。
千葉市エンディングサポート事業を活用する流れ
実際の活用手順は、次のような流れになります。
1.まずは「あんしんケアセンター」に相談
市内各区・地域に設置されているあんしんケアセンター(地域包括支援センター)が、最初の窓口です。
介護や医療に関する相談だけでなく、将来への不安や終活の進め方についても話せます。
- 相談は無料
- 電話または来所で可能(事前予約がおすすめ)
- 千葉市ホームページに全センターの一覧あり
2.必要に応じて専門事業者・市の関係部署を紹介
相談内容によっては、協定を結んだ民間事業者や市役所の関係部署に案内されます。
たとえば…
- 葬儀やお墓の準備 → 協定先の葬儀社・霊園
- 保険や資産管理 → 協定先の生命保険会社
- 相続や遺言 → 市役所法務担当や専門士業
3.講演会や資料で情報収集
タイミングが合えば、市が開催する終活講演会や「おひとりさま支援の手引き」を活用し、知識を整理します。
ここで得た情報をもとに、具体的な準備(エンディングノート記入・遺言作成など)へと進みます。
4.実務手続きに進む
希望や考えが整理できたら、必要に応じて専門家と契約し、書類作成や手続きを進めます。
遺言書、公正証書、死後事務委任契約などは、市の相談窓口では直接代行してもらえないため、専門家によるサポートを受けながら進めることをお勧めします。
行政書士から見た活用ポイント
1.「元気なうちに相談」が大前提
介護や医療の希望はもちろん、財産や相続のことも判断力があるうちに整理しておくことが重要です。
2.行政のサポートは“入口”として使う
市の事業は無料で安心感がありますが、実際の契約や手続きは自分で進める必要があります。
窓口で聞いた情報を持ち帰り、民間の複数事業者や専門家を比較検討するとよいでしょう。
3.おひとりさまは特に早めに動く
頼れる家族がいない場合、財産管理や死後事務の担い手をあらかじめ決めておかないと、
亡くなった後に行政や遠縁の親族が手続きに苦労するケースがあります。
4.終活ノートと遺言をセットで
エンディングノートは希望や情報を整理する道具として優秀ですが、法的効力はありません。
大切な財産や相続の希望は、遺言書で確実に残しておくと安心です。
まとめ
千葉市のエンディングサポート事業は、終活を「何から始めていいかわからない」人にとって、とても入りやすい制度です。
行政と民間の両方の力を活かしながら、介護・医療・葬儀・相続など幅広いテーマにアプローチできます。
まずは、最寄りのあんしんケアセンターに気軽に連絡し、自分や家族の将来について話す時間を持ってみましょう。
それが、安心して最期を迎えるための第一歩になります。
関連リンク
千葉市エンディングサポート事業の詳細や、あんしんケアセンターの連絡先は、
公式ページをご確認ください。
▶ 千葉市|エンディングサポート(終活支援)事業
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千葉市のエンディングサポート事業は、終活の入口として非常に有用ですが、
実際の遺言書作成や死後事務委任契約など、法的に有効な形で準備を進めるには専門的なサポートが必要になる場合があります。
当事務所では、
- 自筆証書遺言・公正証書遺言の作成支援
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