
【はじめに】
がんの告知や余命宣告は、人生の価値観や日常の過ごし方を根本から揺さぶる大きな出来事です。突然の知らせに、本人も家族も動揺し、何から手をつけたらいいのかわからないまま混乱してしまうことも少なくありません。
ですが、告知を受けたからこそ「今できること」に目を向けられる、と考えることもできるのではないでしょうか?
その一つが「終活」です。
終活とは、死を意識した準備ではありますが、それは同時に「今の自分を見つめ、どう生きるかを考える行為」でもあります。
この記事では、がんの告知を受けた方が終活の視点から「やっておくべきこと」として、心の整理、財産や遺言の準備、そして残された時間の過ごし方という3つの柱で具体的なステップを解説します。
この記事を書いている私自身も、20代前半で父親ががん宣告を受け、その約2年後に父親が亡くなるという出来事を経験しています。この記事が、何から始めればいいか迷っている方にとって、少しでも安心して前を向くきっかけになれば幸いです。
- 1. 【はじめに】
- 2. 【 終活とは?|がんと向き合う終活の特徴】
- 3. 【 告知を受けたら始めたい終活の3ステップ】
- 3.1. 🔹 ステップ1:心の整理と財産情報の棚卸し
- 3.2. 🔹 ステップ2:遺言書やエンディングノートの作成
- 3.2.1. ▷ 遺言書(法的に効力のある書面)
- 3.2.2. ▷ エンディングノート(気持ち・希望の記録)
- 3.3. 🔹 ステップ3:残された時間の使い方を考える
- 4. 【 家族とのコミュニケーションも「終活」の一部】
- 5. 【 行政書士にできるサポート】
- 5.1. ▷ 遺言書の作成支援(自筆・公正証書いずれも対応)
- 5.2. ▷ 財産整理・管理の支援
- 5.3. ▷ その他の終活支援
- 6. 【 まとめ】
【 終活とは?|がんと向き合う終活の特徴】
終活とは、文字通り「人生の終わりに向けての活動」のことですが、具体的には主に以下のようなことを指します:
- 財産や契約の整理
- 遺言やエンディングノートの作成
- 医療や介護、葬儀に関する意向の記録
- 大切な人へのメッセージの準備
本来は時間をかけてゆっくり進めるものですが、がんと診断された場合には、体調や治療の進行によって「できること」が日々変わっていく可能性があります。だからこそ、少しでも体力や気力のあるうちに「終活に取り組む意味」は大きいです。
特にがんと向き合う終活には、次のような特徴があります:
- 治療や体調と並行して取り組む必要がある
- 「限られた時間」という意識が、行動を後押しする
- 自分の意思を明確にすることが、家族の精神的負担を減らすことにもつながる
たとえば、遺言や財産のことを曖昧にしたまま亡くなると、残された家族が相続や手続きのことで悩んでしまうことがあります。逆に、本人の希望がしっかり形に残されていれば、家族は「これでよかったんだ」と安心して判断を下すことができます。
がんの告知を受けた今こそ、無理なく、現実的に「できることから取り組む」終活が大切なのです。
【 告知を受けたら始めたい終活の3ステップ】
がんと診断されたとき、「終活をしたほうがいいのか」と頭によぎるものの、実際には何から始めればいいのか戸惑う方が多いと思います。ここでは、体調や心境の変化にも配慮しながら取り組めるよう、段階的な3つのステップに分けてご紹介します。
🔹 ステップ1:心の整理と財産情報の棚卸し
がんの告知を受けた直後は、気持ちの浮き沈みも大きく、「何かをしよう」という気力が湧かないこともあるかもしれません。まずは、今の自分の気持ちや考えを、無理のない範囲で言葉にしてみることが大切です。
たとえば、以下のようなことを紙やノートに書き出してみると、心が少しずつ整理されていきます。
- 今、何に不安を感じているか
- 家族や身近な人に伝えておきたいことはあるか
- 万が一のとき、誰に何を託したいか
もしも余裕があれば、あわせて、財産や契約に関する情報も、少しずつ整理しておくと後々スムーズです。たとえば、
- 銀行口座や通帳の情報
- 不動産の有無と場所
- 保険証券や契約書類の所在
- 借入やローンの状況
- クレジットカード、会員サービスなどの一覧
などをリスト化しておくだけでも、万が一のときに家族が困ることを防ぐことができます。
体調に応じて、数日に分けて少しずつ進めれば十分です。焦る必要はありません。「できるときに、できる分だけ」で構いません。
🔹 ステップ2:遺言書やエンディングノートの作成
心と財産の整理がある程度できたら、次のステップは「自分の意思を形に残すこと」です。その手段としては、遺言書とエンディングノートがあります。
▷ 遺言書(法的に効力のある書面)
遺言書は、亡くなった後の財産の分け方や、誰に何を託すかを明確にしておくためのものです。
特に、公正証書遺言は、作成時に公証人と証人が立ち会い、形式や内容の不備が起きにくいため、体調に不安がある方には安心して勧められる形式です。
遺言書には、以下のようなことが書けます:
- 財産の分け方(相続人の指定、特定の財産の承継先)
- 相続人以外の人への贈与(友人・介護者など)
- 親族以外の人への感謝の気持ちや言葉(付言事項)
一方、法的拘束力を持たないけれど、気軽に記入できるのがエンディングノートです。
▷ エンディングノート(気持ち・希望の記録)
- 医療・延命治療に関する希望(例:人工呼吸器、胃ろうなど)
- 葬儀の形式や場所、連絡してほしい人
- 介護や看取りの希望
- インターネットサービスのID・パスワードやスマホのロック解除方法
- 家族や大切な人への手紙
体調や気力に波がある方でも、箇条書きやメモの形でも構いません。「思いが残る」ということが何より大切です。
🔹 ステップ3:残された時間の使い方を考える
終活は、決して“終わりに向けた準備”だけではありません。
むしろ、「今の時間をどう過ごすか」「残された人生をどう生きるか」を考えることで、より前向きな行動につながることが少なくありません。
たとえば、
- 会いたい人に会う
- 話しておきたかったことを伝える
- 小さな夢をひとつ叶えてみる(旅行・美味しいものを食べる・家族写真を撮る など)
- 過去を振り返って、今に感謝する時間を持つ
こうした“ささやかな選択”が、気持ちを整え、日々の生活に意味や喜びを与えてくれることもあります。
がんと診断されても、自分の人生を主体的に選び取ることは可能です。終活は、あなたの今とこれからの時間に「心の軸」を与える大切な行動なのです。
【 家族とのコミュニケーションも「終活」の一部】
終活というと、「自分ひとりで黙々と進めるもの」というイメージを持つ方もいますが、実は家族との対話も終活の大切な一部です。
もちろん、がん告知を受けたばかりの状況では、「家族を心配させたくない」「弱音を見せたくない」と感じて言い出しにくいこともあるでしょう。けれど、家族にとっても、「本人がどんなことを考えているのか」「どんな希望を持っているのか」がわかることで、精神的な負担が大きく減ります。
▷ たとえば、可能ならば、こんなことを話してみてはいかがでしょうか:
- 延命治療はどこまで希望しているか
- 介護が必要になったときの希望や受け入れ体制
- 財産や相続について、家族間で揉めないようにしたい思い
- 自分の人生で大切にしてきたことや、家族への感謝
これらはすべて、「伝えるだけで、家族の安心になる」内容です。
話しにくい内容は、先にエンディングノートに書き、ノートの存在だけを家族に知らせるという方法でもかまいません。大切なのは、「伝えたい」という意思を持つこと。終活を通じて家族と心を通わせることは、結果としてあなた自身の安心にもつながります。
【 行政書士にできるサポート】
終活の中でも、特に専門的な知識が求められるのが「遺言書」や「財産の整理」です。
当事務所では、がんの告知を受けた方が限られた時間の中でも安心して準備を進められるよう、以下のようなサポートを行っています。
▷ 遺言書の作成支援(自筆・公正証書いずれも対応)
ご希望やご体調に応じて、自筆証書遺言・公正証書遺言のいずれにも対応可能です。
- 財産の分け方や相続人の指定
- 特定の人への遺贈、感謝の言葉を残す付言事項
- ご本人の意思を明確に反映した文案作成
- 公正証書遺言の場合は、公証役場との調整・立会手配も代行します
書き方のルールや手続きに不安がある方でも、安心してご相談いただけます。
▷ 財産整理・管理の支援
相続手続きに備えて、財産の状況を事前に整理しておくことはとても大切です。
- 通帳、不動産、保険、借入、契約サービスなどの財産目録作成
- 必要書類の洗い出しと管理
- 場合によっては、家族信託などを活用した生前の財産管理のご提案も可能です
特に、判断能力の低下が懸念されるケースや、ご家族の負担軽減を図りたい場合に、家族信託は有効な選択肢となることがあります。
▷ その他の終活支援
終活は、財産や法的なことだけでなく、ご本人の意思や想いを整理し、家族に残すことでもあります。
- エンディングノートの作成支援
- 医療・介護・葬儀に関する希望の整理と記録
- 家族との対話を円滑にするための準備
- 死後事務委任契約の作成(葬儀、役所手続き、遺品整理などの代行者指定)
一人暮らしの方や、家族に負担をかけたくないとお考えの方にとって、死後事務委任は心強い仕組みです。
体調や気力に波がある中でも、「今できる範囲で少しずつ進める」ことが大切です。
当事務所では、無理のないペースで一つひとつ一緒に整理していくお手伝いをしています。
【 まとめ】
がんの告知を受けたとき、最初に襲ってくるのは大きな不安と混乱かもしれません。
しかしその中にも、「今できること」「今しかできないこと」が必ずあります。
終活は、未来への不安を減らすとともに、自分の人生を見つめ直し、家族に想いを伝える機会でもあります。
- 自分の気持ちと財産を整理する
- 大切な人に伝えたいことを形に残す
- 残された時間を、自分らしく生きるための行動につなげる
一つ一つは小さなことかもしれませんが、それらを重ねることで、あなたも、あなたの家族も、これからの時間を少しだけ安心して過ごすことができるようになります。
「まだ早いかもしれない」と思っていても、実際に始めてみると、「やってよかった」と感じる瞬間がきっと訪れます。
一歩を踏み出すそのときに、私たちがそっと寄り添える存在であれば幸いです。
✅ ご不安なことがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
終活や遺言に関することは、「なんとなく気になっているけれど、何から始めたらいいかわからない…」という方がほとんどです。
当事務所では、当事務所では、事務所またはZoomによる初回60分無料の個別相談を随時受け付けています。
まずは「話を聞いてみたい」だけでも大丈夫です。何を相談すればいいかもわからない、という方でも丁寧に現状をヒアリングしてアドバイスいたします。
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