エンディングノートというと、緊急連絡先、介護や終末期医療の希望、葬儀やお墓のこと、家族へのメッセージなどを書くもの、というイメージを持つ方が多いと思います。実際、それらは、もしものときに家族が判断するうえで大切な情報です。

ただ、エンディングノートには何を書くべきかを考え始めると、項目が多くて手が止まってしまうこともあります。最初からすべてを書こうとすると、かえって負担になりやすいからです。

そこで、終活の第一歩としておすすめしたいのが、まずは財産整理から始めることです。預貯金、保険、不動産、借入れ、デジタル資産などをエンディングノートで整理しておくと、自分の現状が把握しやすくなり、今後の備えも考えやすくなります。

この記事では、エンディングノートを財産整理のためにどう活用するかという観点から、まず書いておきたい項目や、続けやすい書き方のコツをわかりやすく解説します。

なぜ終活の第一歩として財産整理が大切なのか

終活というと、遺言書や葬儀の準備に意識が向きがちです。しかし、その前提として大切なのが、自分にどんな財産や契約があるかを把握しておくことです。

たとえば、預貯金口座、保険、不動産、借入れなどの情報が整理されていないと、いざというときに家族が困ります。また、自分自身にとっても、老後の生活設計や今後の備えを考える土台になります。

遺言書を考える場合でも、財産の全体像が見えていなければ、何をどう残すかは考えにくいものです。そういう意味で、財産整理は終活の出発点といえるでしょう。

エンディングノートは「人に見せるため」だけのものではない

エンディングノートというと、家族や周囲の人に見てもらうものという印象があるかもしれません。たしかに、緊急連絡先や医療・介護の希望などは、人に伝わることに意味があります。

ただ、財産の見える化という点については、まず自分自身のための整理として書き始めても構いません。どこの銀行に口座があるか、保険に入っているか、不動産があるかを整理するだけでも十分意味があります。

そのうえで、家族が困らないように伝えておきたい情報を、少しずつ人に伝わる形に整えていけばよいでしょう。最初から完成版を作る必要はありません。


紙のノートとデジタル、どちらで作るのがよい?

エンディングノートを始めようと思ったとき、紙で書くべきか、デジタルで管理するべきか迷う方も多いと思います。結論からいえば、どちらが絶対によいというものではありません。大切なのは、自分にとって続けやすい形を選ぶことです。

紙で書くメリット・デメリット

紙のノートは、すぐに書き始めやすいのが利点です。一覧しやすく、デジタルが苦手な方にも向いています。手元で広げて確認しやすい点も安心です。

一方で、修正や追加が増えると、書き直しが面倒になりがちです。情報が変わるたびに訂正が必要になり、整理しにくくなることもあります。保管場所や紛失にも注意が必要です。

デジタルで管理するメリット・デメリット

WordやExcel、スマホのメモなどのデジタル形式は、修正や追加がしやすいのが利点です。必要な項目だけを自分なりに整理しやすく、一覧表も作りやすいでしょう。

ただし、本人以外が見つけにくいという問題があります。パスワード管理や保存場所の工夫も必要です。デジタルに不慣れな方にとっては、かえって続きにくいこともあります。

市販のエンディングノートが合う人、合わない人

本屋などで売られている市販のエンディングノートは、必要そうな項目が一通りそろっている点では便利です。何を書けばよいか分からない方には、入口として使いやすい面もあります。

もっとも、実際には「項目が多すぎて書ききれない」「自分には不要な欄が多くて使いにくい」と感じることもあります。見栄えのよい一冊を完成させることが目的になってしまうと、かえって負担になることもあります。

とくに財産整理を目的に始めるのであれば、最初から立派な一冊を整えようとするより、必要な項目だけを自分に合った形で整理する方が続きやすいでしょう。


エンディングノートで書いておきたい財産の項目

財産整理といっても、最初から細かい金額まで正確に書く必要はありません。まずは「何があるか」「どこにあるか」が分かるようにすることが大切です。

預貯金

まず整理したいのが、預貯金です。金融機関名、支店名、普通預金か定期預金かといった口座の種類、通帳やキャッシュカードの保管場所を書いておくと、後から確認しやすくなります。

使っていない口座や、昔作ったままになっている口座があれば、その存在だけでもメモしておくと役立ちます。

保険

生命保険、医療保険、がん保険などに加入している場合は、保険会社名、保険の種類、証券番号、保険証券の保管場所などを書いておくとよいでしょう。

保険は入っていること自体を家族が知らないこともあります。少なくとも「どこの保険会社に入っているか」が分かるだけでも違います。

不動産

自宅、土地、賃貸物件などの不動産がある場合は、その内容を整理しておきます。細かな評価額まで書けなくても、どこにどんな不動産があるかが分かれば第一歩としては十分です。

あわせて、権利証や登記関係書類、固定資産税の書類などの保管場所もメモしておくと便利です。

有価証券・投資関係

株式、投資信託、NISA口座などがある場合は、利用している証券会社名や、関連書類の保管場所を書いておきましょう。ネット証券を使っている場合は、その存在が家族に伝わりにくいので、特に整理しておきたいところです。

借入れ・ローン

財産だけでなく、負債も大切な情報です。住宅ローン、カードローン、そのほかの借入れがある場合は、その内容を分かる範囲で書いておきます。

また、自分が保証人になっているものがある場合も、忘れずに整理しておきたいところです。

年金・継続収入

年金を受け取っている場合は、その種類を整理しておくとよいでしょう。厚生年金や国民年金のほか、企業年金や個人年金などがある場合もあります。

家賃収入など、継続的に入ってくるお金がある場合も、あわせて記録しておくと全体像がつかみやすくなります。

デジタル資産・デジタル情報

近年は、ネット銀行、ネット証券、電子マネー、各種サブスク契約など、デジタル上にしか情報がないものも増えています。こうしたものは、本人しか把握していないことが少なくありません。

少なくとも、「どんなサービスを使っているか」「大事な情報はどこにあるか」が分かるようにしておくと安心です。

貴重品・重要書類の保管場所

印鑑、通帳、保険証券、権利証、年金関係書類など、重要書類の保管場所も整理しておきたい項目です。あわせて、遺言書を作成している場合は、その有無や保管場所も分かるようにしておくとよいでしょう。

書くときのコツ|最初から完璧を目指さず、「更新しやすさ」を意識する

エンディングノートは、一度きれいに書いて終わるものではありません。終活を進める中で、記載しておきたい内容は少しずつ変わっていきます。

たとえば、遺言書を作成した、死後事務委任契約を結んだ、葬儀社と生前契約をした、任意後見契約を準備した、尊厳死宣言書を作成した、ということがあれば、その都度エンディングノートの内容も見直した方がよいでしょう。

その意味で、エンディングノートは一回限りのメモではなく、終活全体の現在地を確認するための「地図」のような役割を果たします。どこまで備えが進んでいるのか、何が未整理なのかを見えるようにしてくれるからです。

だからこそ、最初から完璧を目指す必要はありません。まずは書けるところから始めて、終活が進むたびに少しずつ更新していくことが大切です。

修正や追記をしやすい形にしておくことも重要です。見栄えよく仕上げることより、後から手直ししやすいことを優先した方が、実際には役立つノートになります。

各ページや各項目に「最終更新日」を書いておくと便利

エンディングノートを書くときは、各ページや主な項目ごとに「最終更新日」を書いておくのがおすすめです。小さな工夫ですが、実用性が大きく変わります。

預貯金口座の解約や追加、保険の見直し、不動産の売却、契約内容の変更があれば、情報はすぐに古くなります。更新日が分かれば、自分でも「これは最近見直した内容か」が判断しやすくなります。

家族にとっても、その情報が新しいのか古いのかが分かりやすくなります。表紙に全体の作成日を書く方法もありますが、財産一覧や契約関係のページごとに更新日を入れておく方が実用的です。


家族に伝えるときの注意点|全部をそのまま見せればよいわけではない

エンディングノートは家族のためにも役立ちますが、書いた内容を全部そのまま見せればよい、というわけではありません。情報の中には、慎重に扱った方がよいものもあります。

たとえば、口座番号の詳細、暗証番号、IDやパスワードそのものなどは、記載方法や保管方法に注意が必要です。まとめて書いておくと、かえってリスクになることもあります。

大切なのは、「どこに何があるか」「どんな契約があるか」「必要な書類はどこか」が分かるようにしておくことです。書くことと、誰にどこまで見せるかは、分けて考えてよいでしょう。


エンディングノートとあわせて検討しておきたい備え

エンディングノートは、情報整理や希望の整理にはとても役立ちます。ただし、法的な効力が必要な場面では、それだけでは足りないことがあります。

たとえば、「誰に何を残すかを決めたい」「相続人が複数いて配慮が必要」「子どもがいない夫婦」「再婚家庭」「不動産が中心」といった場合には、遺言書もあわせて検討したいところです。

また、判断能力の低下に備えるなら任意後見契約、亡くなった後の事務を整理したいなら死後事務委任契約、医療や延命治療について意思を明確にしたいなら尊厳死宣言書など、別の備えが必要になることもあります。

こうした対策を進めるたびに、エンディングノートの内容も更新されていきます。だからこそ、エンディングノートは終活の出発点であると同時に、その後の備えを整理していく地図の役割も果たします。


まとめ|まずは「自分の整理」として書き始めれば十分

エンディングノートというと、家族に見せるためのものという印象が強いかもしれません。しかし、最初から完成版を作ろうとしなくても大丈夫です。

まずは、自分のための整理として、預貯金、保険、不動産、借入れ、デジタル資産などを見える化するところから始めれば十分です。それだけでも、自分の現状が把握しやすくなり、今後の備えを考える土台になります。

紙でもデジタルでも、自分に合った方法で続けることが大切です。そして、一度書いて終わりにせず、各ページに最終更新日を付けながら見直していくと、より実用的なものになります。

エンディングノートは、終活全体の現在地を確認するための地図のようなものです。まずは書けるところから始めて、必要な備えが進むたびに少しずつ更新していけばよいでしょう。