このページは、遺言書作成に役立つ基礎知識をまとめたガイドページです。

遺言が必要になる場面、遺言の種類、作成前の準備、保管方法、亡くなった後の探し方など、遺言について全体像を知りたい方に向けて、基本事項を整理しています。

まずは基礎から知りたい方はこのページから、具体的なご相談をご希望の方はサービス案内ページへ、細かな疑問を確認したい方はQ&Aページもあわせてご覧ください。

遺言とは

遺言とは、自分が亡くなった後に、誰にどの財産を引き継がせるかなどを示すための意思表示です。
相続が始まった後の話し合いや手続きをできるだけ円滑に進めるための、大切な備えのひとつです。

相続では、遺言がない場合、法律で定められた相続分にしたがって遺産が分けられます。その際に、通常は相続人全員で遺産分割協議をすることになります。
相続人どうしの関係が良好で、財産も分けやすい場合は大きな問題にならないこともありますが、不動産がある場合や、相続人が多い場合、意見が分かれやすい場合には、手続きが長引くこともあります。

適切な内容の遺言があれば、そのような遺産分割時のトラブルのリスクを避けることができます。

また、遺言は、単に「財産が多い人のためのもの」ではありません。
たとえば、特定の家族に自宅を残したい場合や、相続人以外の人に財産を渡したい場合、お墓や仏壇の承継について自分の考えを示したい場合などにも、遺言が役立つことがあります。


こんな場合は遺言を考えたい

遺言は、すべての人に必ず必要というものではありませんが、法定相続分どおりでは希望に合わない場合や、相続人どうしの話し合いがまとまりにくい可能性がある場合には、特に検討したい準備です。

たとえば、子どもがいない夫婦では、配偶者だけでなく兄弟姉妹が相続人になることがあります。
このような場合、配偶者にできるだけ多く財産を残したいと考えるなら、遺言の必要性が高くなります。

また、兄弟姉妹が相続人になる場合相続人以外の人に財産を残したい場合不動産が中心で遺産を分けにくい場合家族関係に不安がある場合なども、遺言を考えたい場面です。
さらに、相続人の一人に特定の財産を引き継がせたい場合や、死後の手続きをできるだけスムーズにしたい場合にも、遺言は有力な手段になります。

遺言は、元気なうちでなければ作成しにくくなることがあります。
そのため、「まだ先のこと」と考えず、必要性を感じた段階で少しずつ準備を始めることが大切です。

遺言書作成から執行までの流れ

1. 原案を考える

遺言書は遺言者が自分の財産を自分の死後、誰に譲り渡すかを表明するものです。なので、「誰に」「何を」「どのように」相続させる(遺贈する)かを決めることがスタートであり最終形です。ですが、いきなり全部を決めるのはなかなか難しい場合もありますので、少しずつ考えながら意思を固めていく作業が通常は必要になります。

「誰に」残すか

もしも遺言がないまま自分が亡くなった場合は、法定相続人が相続分の割合によって相続することになります。

ですが、もともとは自分が所有している財産なわけですから、本来は自分が決めたように好きな人に譲り渡してもいいものです。子どもや孫、甥姪や兄弟姉妹、お世話になった人、公益団体への寄付などが考えられます。

「何を」残すか

自分がどのような財産をどれくらい持っているか、は、簡単なようで全部を把握するのはそう簡単でもありません。また、遺言書にはその自分の財産の全部について個別に列挙しながら書かなければいけないというものでもありません。

例えば、一番多い書き方のパターンは、不動産、預貯金、株式など主要な財産は個別に列挙して「〇〇に相続させる」などと明示し、こまごまとした財産や書き洩らしたかもしれない財産については、「その余の財産(それ以外の財産)は、〇〇に相続させる」という風に包括的に書くというやり方です。

お墓のことは遺言に書ける?
お墓や仏壇のことについては、地方の慣習などによって異なることが多いため、ほかの財産とは扱いが異なります。具体的には、祭祀承継者の指定、という形で仏壇やお墓を承継する人を遺言で指定することができます。

「どのように」残すか

通常であれば、〇〇銀行の預金は〇〇に相続させる、などの形で譲り渡すことになるでしょう。

ここで、注意が必要なのは不動産についてです。「相続人たちで均等に分けてね」というのは一見すると平等で妥当なように見えますが、実際は不動産の共有は不都合なことが多いです。一緒に住むのは現実的ではないし、管理を誰がするか、税金は誰がどう払うかなどを考えると、必ずしも妥当とは言えません。そこで、遺言者の死後は、売却して、売却代金を分けることにしたり、特定の相続人に不動産を相続させる代わりにほかの人には預金を多く相続させる、などの配慮が必要になります。

遺言執行者について検討する

遺言は遺言者の死亡によって効力が発生するものなので、遺言の効力発生後、その遺言の内容通りに実際に財産の名義変更などを行う人が必要になります。

遺言執行者を指定していれば、その人が単独で名義変更手続きなどを行うことができます。逆に言うと、遺言執行者を指定していない場合は、結局、名義変更手続きの際に相続人全員の署名・押印と印鑑証明書が必要になることもあり、せっかく遺言を作成したのに、スムーズに手続きが進まないということにもなりかねません。

信頼できる家族や親族を遺言執行者に指定することを検討しましょう。

相続人の遺留分について検討する

遺留分というのは、特定の相続人に法律上認められる「最低限の取り分」です。一部の人があまりにも多く相続するような内容の場合、他の相続人が不満に思うかもしれません。必ずしも遺留分の額を各相続人に渡す内容にしなければならないものではありませんが、あらかじめその旨を各相続人に伝えたり、付言事項に理由を添えるなど、争いが起こらないように配慮することが大切です。

2. 遺言の方式、作成方法を決める

遺言の方式としては、通常、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります(※今後法改正により「保管証書遺言」が加わることが予想されます)。

自筆証書遺言の特徴

  • 自分で作成できる(本文は全文自書する)
  • 費用を抑えやすい
  • 思い立ったときに作成・書き直しがしやすい
  • 書き方に不備があると無効になるおそれがある
  • 保管方法によっては、見つからない・破棄されるなどのリスクがある
  • 法務局の保管制度を利用すれば、特定の相続人等への通知制度を利用することで「見つからないリスク」を減らせる。

公正証書遺言の特徴

  • 公証人が関与して作成するため、方式面で安全性が高い
  • 原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配が少ない
  • 相続開始後の手続きでも利用しやすい
  • 内容を整理しながら作成しやすい
  • 証人が必要になる
  • 公証役場との調整や必要書類の準備に手間がかかる
  • 自筆証書遺言に比べると費用もかかる

選び方・迷った場合

できるだけ費用を抑えて、自分で作成したい場合は、自筆証書遺言が選択肢になります。
ただし、内容が複雑な場合や、不備なく確実に残したい場合、相続人どうしで争いになる可能性がある場合には、公正証書遺言の方が安心なことも多いです。

迷った場合は、まずは「確実性を優先するか」「手軽さを優先するか」で考えると整理しやすくなります。
また、自筆証書遺言で原案をまとめたうえで、最終的には公正証書遺言にする、という進め方もあります。

3. 遺言書を実際に作成する

実際の遺言書作成手続きについては、自筆の場合と公正証書の場合で異なります。

自筆証書遺言の場合

任意の用紙を用意して、万年筆やボールペンなどで、本文を全部自書して作成します。

法律上必須の要件は、① 全文自書、② 日付、③遺言者の署名・押印です。

押印に関しては今後法改正により不要になったとしても、基本的には実印などで押印することが望ましいでしょう。そのほうが「本人が間違いなく作成した」ということの証拠になるからです。

財産目録をコピーやプリントにする場合の綴じ方や、書き損じた場合の修正の仕方については法律上厳格に指定されており、場合によっては遺言全体が無効になりかねないので、細心の注意が必要です。

作成したものは、通常は封筒などにいれて、封印することが多いです。

公正証書遺言の場合

公正証書遺言では、まず遺言の内容を整理したうえで、必要書類をそろえ、公証役場との調整を進めます。遺言者が考えている内容をもとに、公証人と打合せをしながら原案をかため、公証人の方で文案を作成してもらえます。

内容や必要書類が整ったら、証人の立会いのもとで公正証書遺言を作成します。

公正証書は「原本」「正本」「謄本」の3つが作成されます。「原本」は公証役場にて保管され、「正本」と「謄本」が作成者に交付されます。

4. 作成した遺言書を保管する

遺言書を作成した後は、亡くなった後にきちんと見つかり、使える状態にしておくことが大切です。

自筆証書遺言を保管する場合

自筆証書遺言を自宅で保管すること自体は可能ですが、保管場所によっては、相続人に見つけてもらえなかったり、紛失や破棄のおそれが生じたりすることがあります。
また、見つかった後に家庭裁判所での検認が必要になる場合もあります。

こうした不安を減らす方法として、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用することができます。
この制度を利用すると、遺言書を法務局で保管してもらうことができ、紛失や改ざんのリスクを抑えやすくなります。自宅保管にするか、法務局保管を利用するかは、作成時にあわせて考えておくとよいでしょう。

公正証書遺言を保管する場合

公正証書遺言は、原本が公証役場に保管されます。
そのため、自筆証書遺言に比べると、紛失や改ざんの心配が少なく、相続開始後にも確認しやすい方式です。

ただし、原本が公証役場に保管されるからといって、家族が遺言書の存在をまったく知らないと、すぐに手続きにつながらないこともあります。
そのため、公正証書遺言であっても、遺言を作成したこと自体は、必要に応じて家族に伝えておくと安心です。

5. 必要に応じて見直す

遺言書は、一度作成したら必ずそのままでよいとは限りません。
作成時には適切だった内容でも、その後の生活や家族関係、財産の変化によって、見直した方がよい場合があります。

たとえば、不動産を売却した、預貯金の状況が大きく変わった、相続人が亡くなった、家族関係に変化があったといった場合には、遺言の内容と現実がずれてしまうことがあります。
こうした場合には、遺言書をそのままにせず、必要に応じて内容を確認することが大切です。

遺言内容を修正したくなった場合、基本的には、後から新しく作成し直すことをおすすめしています。

6. 遺言者死亡後の流れ

遺言書は、作成して保管した後、実際には亡くなった後に確認され、執行されることになります。

まず、相続が始まった後に、遺言書があるかどうかを確認します。
自宅で保管していた場合は保管場所を探し、公正証書遺言であれば公証役場で確認し、法務局の保管制度を利用していた場合は法務局で確認することになります。

遺言書が見つかった後は、その方式によって必要な手続きが異なります。
自筆証書遺言では、保管方法によって家庭裁判所での検認が必要になる場合がありますが、公正証書遺言や法務局保管の自筆証書遺言では、通常は検認は不要です。

その後、遺言の内容に従って、不動産の名義変更、預貯金の解約や払戻しなどの手続きが進められます。
遺言執行者が指定されている場合には、その人が中心となって手続きを進めます。
遺言執行者が指定されていない場合には、相続人代表者などが中心となって進めることになります。

よくある質問

Q. 自筆証書遺言と公正証書遺言は、どちらを選べばよいですか?
A. 手軽さを重視するなら自筆証書遺言、確実性や保管面の安心感を重視するなら公正証書遺言が有力です。財産の内容や家族関係に応じて選ぶことが大切です。

Q. 遺言書は一度作れば、そのままで大丈夫ですか?
A. 必ずしもそうとは限りません。財産や家族関係に変化があった場合は、内容を見直した方がよいことがあります。

Q. 遺言書は家族に見せるべきですか?
A. 内容まで伝えるかどうかは個々の事情によりますが、遺言書を作成していることや保管先の手がかりは伝えておくと安心です。

さらに詳しい質問と回答は、「遺言書のよくある質問」をご覧ください。
遺言書のよくある質問はこちら

まとめ

遺言書作成は、いきなり本文を書き始めるのではなく、まず原案を考え、方式を選び、実際に作成し、適切に保管し、必要に応じて見直す、という流れで進めることが大切です。
また、遺言書は作成して終わりではなく、亡くなった後に確認され、実際に執行されて初めて意味を持ちます。
自分だけで進められる部分もありますが、内容が複雑な場合や確実性を重視したい場合は、途中から専門家に相談することも検討するとよいでしょう。